- 2015.12.13(日) 〜 2016.01.31(日) 13:00-18:00
※金~月のみ開館
※金~月のみ開館
HOSPITALEレジデンスプログラム招聘作家の佐々瞬による成果発表展を開催します。
これまで、佐々は実在の人物や現実で起こる出来事をとっかかりとして、日記やドキュメントを重ねながら可能性としての過去/未来を提示し、フィクションと現実が交錯する世界を巧みに表出させる作品を発表してきました。
このたびの約3週間にわたる滞在制作では、『暮しの手帖』を創刊した初代編集長・花森安治に光をあて、当時の雑誌の愛読者へのインタビューを通じ、「他者の経験を共有すること」の可能性とその限界、それが人にもたらすものについて検証し、作品化することを試みました。第二次大戦中、大政翼賛会の宣伝部などで活躍していた花森は、敗戦を機に転向し、「国家」や「企業」といった大きな力への対抗として個人の「暮らし」を掲げ、自律的なジャーナリズムと自律的な市民による日本の再建をめざして活動してきました。戦後23年目の1968年、花森が特集した「戦争中の暮しの記録」をふとしたことから手にした佐々は、「この本だけはどんなにボロボロになっても残してほしい」という花森の記した編集後記の言葉と、手垢がつきセロテープの補修だらけの本に遺された痕跡を手掛かりに、花森自身の思想の源泉と当時の読者たちのなかにどのようなかたちでそれが息づいているかについて、インタビューを重ねながら探っていきました。
戦争を経験した世代が遺そうと思ったもの、それを受け取りつつ戦争の影の下に高度経済成長期を過ごしたもの、そして戦後70年という時代を共有する今に生きるもの。本展が、それぞれの経験がいかに繋がり、未来の暮らしと社会をつくっていくのかについて、考えるきっかけになれば幸いです。