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すみおれアーカイヴス2019が始動し、サポート参加者に向けての説明会を開かれました。この企画は、個人の記録映像として撮られた8mmフィルム映像に、当時の被写体あるいは撮影者だった方々と鑑賞することで、記憶を引き出すというプロセスがあります。このプロセスの中には、映像には映っていないそれぞれの記憶が引き出される面白さがあり、また昔の映像を見ることで、当時の話をもっと聞いてみたくなったり、実際の場所(または、その場所であったところ)に行ってみたくなることも醍醐味の一つだそうです。

そして、企画の目的は、このプロセスから昔の市井の人たちの暮らしを浮き彫りにして、「記憶のマップ」にすることで、最終的には、収集した映像を皆が自由にアクセスして活用できるようにすることが目標です。

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説明会の後、参加者全員で映像ワークショップ「remoscope」を行いました。ひとり一台ずつ、ハンディビデオカメラを持ち、「カメラは固定/音なし/ズームなし・・・」などのルールに則って、1分間の映像を撮るというもの。皆が三々五々街へ繰り出し、時間がたったら集合し、各自の映像を皆で見ながら意見を出し合いました。

はじめは、「カメラを固定することのおもしろみはなんだろう?」「撮る場所、アングル、アイデア、みんなとかぶるかな?」「撮りたいものは見つけられるんかな?」といろいろ不安がありましたが、いざ街を歩いてみると、「あ、ここから見ると、人、もの、空、建物が、おもしろい気がする・・・。」と、自分が美しいと思うものやそれらを切り取る枠の形が、自然に浮かんできました。

集合場所に戻り、それぞれの映像を一つずつ上映しながら撮影者が説明しました。撮影のスキルを同質化するルールのおかげで、純粋に映像に映っているものについてのコメントが飛び交いました。映像を囲んで語り合うことで、おなじ時間、おなじ街なのに、自分が見ていてみんなが見ていない場所や時間があって、どんな思いで1分という場所と時間を切り取り、映像に記録したかったのか、参加者みんなの人となりが見えてきて、とても楽しい時間でした。

今はスマートフォンで簡単に映像が撮れる時代だけれど、8mmフィルムが発明された当時、いち早くビデオを手にした人たちの、映像作品やその被写体へ込める想いはどんなだったのか。当時撮影した人たちの気持ちにみんなで想いを馳せることができました。その後、手巻き寿司を夕食にみんなでつくって食べて、参加したみなさんとお話を深めました。

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2日目の今日は、午後と夜の2本立てで、8mmフィルムを提供してくださった方のお宅へ伺い、映像を見ながら取材をしました。ヒアリングの目的、気をつけること&聞くときの視点を簡単に説明を受けて、現地へ移動しました。

1人目の方は、鳥取市の大火を逃げた記憶を鮮明に覚えておられる方でした。当時の地図を見ながら、追体験をお話してもらいました。地図を眺めながら、テーブルにあった和菓子の爪楊枝をポインターにして、「ここが」「あそこから・・・」「ここに井戸があってね」、お話が始まりましたが、スムーズに進んでいくかと思えば、そこからたくさんのエピソードのお話に広がっていきました。「あれ?今日は何を聞く予定なんだっけ?」と自分自身が迷子になることたびたびありましたが、その度、うなずき続ける聞き手の松本さんを見て、「そうか、そうか、まあこれもありか。」と安心し、また迷子になって安心して、の繰り返しでした。この取材において、シナリオの効力なんて知れてるんだと感じました。

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話の筋にこだわらず、この現場で繰り広げられる即興劇を楽しむように意識を変えて、語り手さんのお話に身を委ねながら取材は終わりました。お話の終盤には、語り手さんが用意していた、江戸の文字クイズをみんなで遊びました。時間を重ねていくうちに、人となりが見えてきて、ホスピタリティーのある方であることがわかりました。その後、外へ出て、昔の家があった場所を案内していただき、昔の町並みを思い浮かべながら街を散策しました。

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次の取材は、川端通りで畳店を営まれる方と同じ町内のみなさんです。畳店で映像を上映しながらお話を伺うので、プロジェクターを設営していると、ぞくぞくと町内のみなさんが集まりました。うすぼんやりとした綺麗な夕暮れ時、同じ町の昔の夏祭りの映像を、総勢15人ほどで囲んで鑑賞しました。地元のみなさん、取材を進行する松本さん、ピンク色のメガネかけた蛇谷さん、学生のみなさんと、なんとも不思議な集まりのため、道行く人たちが「なんのイベント?」と、覗きながら通っていきました。

「あれは○○さんとこの△ちゃんや」「この頃サングラスが流行っとって、男連中はみんなかけよった。ははは」「ラブホテルが近所で・・・笑」「神社の境内で野球・・」「そういえば○○さんは・・・」映像に映されていることも、映っていないことも、下ネタも飛び交うほどざっくばらんにおしゃべりができ、当時「銀座通り」のお話を、ひとりひとりの視点で聞くことができました。

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今この場所に、いろんな人の暮らしがあって、大なり小なりの出来事があり、いろんな気持ちや感情が行き来していた。と想像すると、一瞬、時間の流れがぐっと昔に遡ったように感じました。鑑賞会が終わって、辺りが暗くなり雨が降る帰り道では、当時暮らした人たちの物語も、しっとりと、そこに在るようでした。

たくさんのお話を聞いて聞いて聞き続けて、身体はくたくただったけれど、気持ちは不思議と元気でした。お話を聞いている間、フラッグ(目的)を見失う時もたくさんあって、語られる細かなエピソードの支流に引き込まれるごとに「あれっ?わたしは今ここに、なんでいるんだっけ? お話のゴールはどこ?」と、我に返ることもありましたが、もうゴールはなくていいのではないでしょうか? だってこの畳店の店先で座りながら見る夏の夕暮れの風景は、とっても和やかで幸せだったから。と普段の自分の振る舞いに改めて考え直しました。

1日目に説明を受けた内容が経験することでよくわかりました。このプロセスに額縁をつけて成果物にしなくてもいいんでは、と思うほど、いろんな立場の人たちの記憶を共有できた、宝物のような瞬間でした。 とは言え、それぞれの体験という形でこのプロセスをたくさんのみなさんと共有できたら嬉しいです。プロジェクトはまだまだ続きます。ぜひお気軽にご参加ください。