【このリサーチは「手紙って一体何だろう?」を考えるリサーチです】
【インタビュー/手紙について】
【⑦】本間公さん 【日時】3月20日 19:30~ 【場所】ことめや
本間さんは店舗の内装などを手がけている。とても忙しい方で、この日も北九州からの戻りでことめやに寄ってくださった。
本間さんはかつてバックパックで旅をする人だった。今でも息子さんと遠出することがある。インタビューを受けていただいたときは「今度シドニーに行く」と。本当はドミトリーの、ゲストハウスのようなところに泊まり、普段知り合えない人たちと、自然と会話が始まるような宿泊場所を選びたいけれど。
そんな息子さんが10歳のとき「2分の1成人式」にくれた手紙を見せてもらった。
お父さんのような立派な職人になりたい、そのために手伝ってくれてありがとう…といったことが綴られている。この手紙をもらった当日は参観日のように保護者が学校に赴き、1対1で手紙を渡してもらったのだそうだ。
本間さん、手紙を書くことはありますか?
「尊敬しているアニキみたいな人たちがいる。インテリアコーディネーターやサプライヤーのような仕事をしている二人で、世界中を旅し見つけたものを世の中に紹介している。俺も仕事先や旅で何か見つけたら、彼らにそれを送ることがある。そこに手紙を添えるんだけど、手紙と物…どちらが主かわからないね。彼らから直接何かを教わったというわけではないけれど、迷ったときに彼らの仕事を見て自分がやろうとしていることの方向性を確認できたり、勇気をもらったりしてる。」
先方からの返事はメールだったり、電話だったり。
手紙を送る、返事をする。問いと、答え。
空間を作る本間さんの仕事は、クライアントが提示するお題を自分なりに読み解いた回答のようなものだと言う。
「その人のことを知り、やりたいことを聞く。例えば蕎麦屋さんの内装を手がけるならば、蕎麦とは一体何なのか?を改めて考え、この場所で最善のことをする。店舗は商売の道具のひとつであって、それ以外の異質なもの、様々なものたちを組み合わせなければならない。カスタマイズがうまくいくようにサポートする」
でも、「作品を作る、というようなことは全く考えてない。うまく動く、機能する機械を作るような感覚。見た目も大事」
そして、「お客さんが来る、来てくれるっていうのが”返事”だよね」
身体と魂(意識、心)の関係に似ていると感じた。
「魂をしっかり持っていても、どんなボディが良いかは分からない場合がある」
本間さんは、人の心・希望するところを読み解き、それに最適な・よく動く身体を創り出す。
「書いていると会っている気がする」
手紙について伺っているうちに、本間さんがふと口にした言葉。
「いや、自分の言葉じゃないんだけど」
これは、バックパッカーたちのバイブルとも言うべき沢木耕太郎著『深夜特急』シリーズの一節だ。一人ぼっちで世界を歩く沢木は(おそらく恋人と思われる?)女性に向けて手紙を書いているのが文中でわかる。「孤独を癒やしてくれるというか、そういうのはわかる気がします」
「手紙からはただ用事が伝わるだけじゃない。手間がかかることだし、時間をかけてくれたんだな、とその人の気持ちを感じるよね」
と本間さん。
読むとき、書くときに、その瞬間相手も私も現れる。
(山崎阿弥)