8回目となったパブリックプログラムでは、戦争や国家など社会的なテーマを核にして、鳥取を拠点に作家活動を行う彫刻家の藤原勇輝さんをゲストに迎えオープントークを行いました。

まず、藤原さんの《MIKARA DETA SABI》(2008)をはじめとする作品を紹介して頂きました。藤原さんは鳥取という日本海側の地を活動の拠点にすることで、朝鮮半島との近さを感じ、それに纏わる事柄を意識した作品を制作してきました。しかし、そういった事柄(社会的・個人がダメージを受けている事柄)を取り上げる際にはリサーチをしっかりしなければ、NGワード(表現規制)にぶつかってしまうことがある、とお話しされていました。

また、藤原さんが学生時代「(巨大な)作品の大きさに対して根拠がない」と指摘され、そこから作品の場所性や、社会的なコンテクストについて深く考えるようになったとの事。一方山下さんは自身の作品では、も大きな舞台装置が好きであり《無門館の水は二度流せ詰まらぬ》(2017)で舞台をかさ上げし、巨大な穴を作ったそうです。また、この作品には、プラカードを持って社会にモノ申すようなシーンがあるが、言葉を使うにしても詩的な言葉を使いたいと仰っていました。

互いのこれまでの作品を紹介しあった後、山下さんが今回のレジデンスで取り組んでいるからマレーシアの選挙をテーマとした作品の話へ。今回は、山下さんがマレーシアでの選挙キャンペーン中に間違えて相手陣営に入ってしまった時のエピソードや、演説をする為にあった裏の交渉の話などがありました。

トークの中で、山下さんは「空間が踊って、身体が空っぽになるような、身体の外側が大切」「身体表現として訳の分からない所に行きたい」と仰っていました。それに対して、藤原さんは「隙間を狙って、ちょっと視点を変えれば色々あるのではないか」「訳の分からない所に行きたいという気持ちもあるが、僕は感覚タイプではないと思う」と応じ、お二人の目指す方向の違いが感じられました。(門脇瑞葉)