第三回目のパブリックプログラムでは鳥取大学で文化政策論の研究をしていらっしゃる竹内潔先生をお招きし、公開トークを行いました。
まず山下さんは、マレーシアのリサーチを台本にしたものをベースに選挙についての説明を行いました。ファミー・ファジールがリッチな人も貧しい人もいる、リベラル寄りの地域の野党立候補者であること、野党の分裂があったため(野党の勝利については)悲観的な予想をしていたことなど、山下さんが関わった友人の選挙の話に始まり、マレーシアの金と政治や選挙のルールといった、基礎知識や背景にも言及する内容でした。台本を読む山下さんは普段より声を張り、時折拳を握りながら話をしていました。その姿は勇ましく政治演説をする立候補者の様にも見えました。
竹内先生はその話から「政治と熱狂」という点に興味を持ち、「マレーシアと日本の選挙を比べると、政権交代や政局の変化への期待度が低い(低かった)点は同じなのに投票率や盛り上がりに差があるのは何故なのか」という大きな問いの投げかけがありました。
それに対して、日本人には歴史的に選挙権などを勝ち取ったという感覚が薄く、ルールをきっちり守った選挙戦を繰り広げているのに対し、マレーシアでは選挙の当落が候補者の生死を決めるほど重大で、選挙戦は無法地帯とも言える様な様々な手法が使われていること事などが話題にあがりました。また、選挙というものは本来熱狂的な、パッションを持っているモノなのではないだろうかという考えを竹内先生は述べていました。
マレーシアの選挙の熱狂を肌で感じてきた山下さんは、その熱狂を素直にドキュメンタリーにすることや、「舞台作品」として作ることで嘘っぽくしてしまいたくないと仰っていて、そこから制作に対する真摯な態度を感じました。フィクションとノンフィクションの間に生まれる表現とは、どのようなものになるのか、という視点からも作品を見てみようと思いました。(門脇瑞葉)