第二回目のパブリックプログラムでは、環境社会学・村落社会学を専攻とし、各地の民俗芸能のフィールドワークにも携わっていらっしゃる家中茂氏をお招きし、公開トークを行いました。
今回のトークでは、山下さんのマレーシアでのリサーチの説明から始まりました。その説明を聞いた家中さんが疑問に感じたことを掘り下げるかたちで展開していきました。
トークの中で、山下さんが「自分にないものに出会いたい」ということからマレーシアの選挙のリサーチへ飛び込み、町の中、路上にいる人々の集団の中の言葉に興味を寄せているというお話があり、そこから、山下さんのリサーチや家中さんのリサーチ、トークにお越し下さったオーディエンスの方のリサーチやアウトプットの違いについての話題に及んでいきました。目標や目的を明らかにしそれに向かい真っ直ぐ進む方もいる中、山下さんは必然性がないことはしないが、明確なアウトプットに向かうのではなく「究極は本番中に終わり方を探していく」様な作品に憧れていると仰っていました。
それに対し家中さんは「知る事は変わる事であり、変わった先は予想できない」ことを念頭に置き、飛び込んでからアウトプットの方向を決めるようなリサーチを長く続けている、という自身のお話をされました。また、リサーチにおいては、リフレクティブ(反省的な)にものごとを見つめ、絶えず自分が「どういうことをやっているか」「何を経験しているか」を考え、その上で論文の作法(フレーム)に納め論文執筆を行っている、ということでした。
家中さんのリサーチーアウトプットの流れと比較して、「山下さんはもっとメタな視点で制作を行っているのでは?」と家中さんが残さんに質問をしたところ、「観客の反応を前提にする制作をしていて、それを大切にしたいと同時に制約にも感じる」と答えつつ、「どこに焦点を当てていいのか分からない中、やってみるという点に可能性を感じる」という制作への態度を述べられたのが印象的でした。
今回のトークは山下さんの表現の根源により迫るものであったのではないでしょうか。レジデンス・プログラムだからこそ見られるリサーチから作品へという制作のプロセスについて、今後考えていきたいと思う機会となりました。(門脇瑞葉)