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画像:ウェルカムパーティー@ことめや広間

School in Progress(以下SiP)と名付けた私達の試みは今回で3回目を迎えた。体系だったカリキュラムとか、目標めいた何かを達成することが当初から目的ではないとは言え、過去2回の経験は大きく、これまでやってきて手応えのある内容をさらに発展させたり、なるべく新しいチャンレンジもしようという心持ちで臨んだ。

例えば記録へのアプローチ。これまで主に固定ビデオカメラとスチル撮影で記録してきたが、スクールの雰囲気が伝わりそうな短い動画のアウトプットを前提に映像撮影者に入ってもらった。複数のスタッフでインスタグラムをやってみたがこれはスクールの性格と合っていたように思う。それからただでさえ詰まりに詰まったスケジュールなのだが敢えて限界までその線を試そうということでもないが・・・食べる時間は合宿期間中にいろいろな起点になるという気付きからも、身体へダイブ・インの方向からも、食べる時間さえも講座にしてしまおう!と井口和泉さんに講師として来てもらった事で新鮮な拡がりを生んだと思う。オープンスクール的なフィナーレとお楽しみBBQを発展融合?!させ「フェス(の練習)」という名の湖畔のミニ・フェスを(現在、鳥取で活動している建築ユニット喫茶ミラクルの協力も得つつ)試行したり。マンネリ化を避けたい思いがあるのは当然なのだが、良い意味で3回目の開催ともなると否応無しに「らしさ」みたいなものがあることもまた必然で大事なことだと思っている。それは重力みたいなもので間違いなく存在し影響している、けれども見えるのはその結果であってそれそのものではない。ある種の縛りを生み動きが鈍るかもしれないし、そこを軸にしてバランスをとったりする事も可能だ。

まずSiPらしさの最たるものがスケジュール。正確にはその取り扱い方。普通はスケジュールと言ったら芝居の脚本のようなものかもしれない。しかし私達の場合はきちんと読み込んでも立ち居振る舞いがわかる様な類のお話しは用意していない。事細かなセリフは書き込まれていないし、いざ本番となってもセリフはおろか具体的な演出が与えられない場合もある。一歩間違うと無責任な状況にもなってしまうためその辺りは緊張感をもって試行錯誤しているつもりだ。結果的に、その場その場その時その時のプログラムを軸に居合わせた人達の間でおこることに反応しながら、プログラムそのものが常にアップデートされていく渦中に自らが放り込まれるのがスクールの醍醐味だと思う。なので、SiPではほぼ間違いなくどこかが現場で変更されることを前提とし、状況次第で新たに場面が足されたり削られたりする余地が大いに生まれるように工夫しながら、それでも何かしらの脈略も考えつつ、結構な時間とエネルギーをつぎ込んでスケジュールが用意される。それはディレクター、スタッフ、参加者というSiPを作り上げる全員で事前に共有されるべき方向性、今回はこんな感じでいきますよ!というSiPを体現する重要なステイトメントだ。
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画像:D2人によって今まさに何かが変更されようとしている瞬間(か?)
個人的に今回のSiP2019で「らしさ」を感じた出来事があった。初日の夜に担当していた「身体を考える時間」というプログラムに関して直前に会場変更を行ったときのことだ。当初は畳敷きであることもあって「身体を考える時間」はスクールのメイン会場の一つであることめやの広間で行う予定であったが、スタッフも入れると20名くらいがウェルカムパーティーの際に部屋に入っている様子を見て、率直に言って手狭なので身体をリラックスして動かすには無理があるな、と私は感じた。もう一つのメイン会場である旧横田医院内のスペースは広さ的にはことめやよりも広い・・・しかし予想以上の暑さの中夜とは言え冷房もない・・・なによりも床はコンクリートだ。ブルーシート等をひいたとしても身体を動かした時にリラックスするかというと・・・微妙なところ。しまったな・・・。
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画像:リサーチの時間@ことめや広間。旧横田医院で映像撮影中の参加者。
やり方を変えるか、いっそ別の内容にするか、どうしたもんかと頭のどこかでずっと考え続けていたのだが、朝から予定外のおにぎり講習会を加えたオリエンテーション、リサーチの時間開始とあれこれ忙殺され、時間だけが過ぎていった。一息いれられるタイミングを見つけたのは夕食前だった。職員室(スタッフルーム)を時に兼ねるキッチンに行くと、SiP裏方ディレクターの赤井さんとSiPコアスタッフの蛇谷さんが二人で話しをしているところだった。たぶん二人の話を遮るくらいのテンションで「あ〜、どうしようかな〜。」と懸案の会場のことを私は吐露した。
「さすがに直前すぎでしょ!」と言われるか、とも思ったが即座に「あ、あそこは?畳敷きだし広さも十分じゃない?でも、もう閉まってるかな〜。」「確かに。いけるかも。でも普段は夜締めてるよね。しかも当日というか直前やしな(笑)。どうやろう。」とひとつの可能性が疑問系とはいえ浮上した。驚いたことにその場所はことめやからわずかに徒歩2〜3分!だが夕食後のプログラム開始時間まであとわずか。
「とりあえず見てみたい。行ってみたい。使えそうなら交渉しよう。」
「じゃあ今から行く?」
会場は広すぎず狭すぎずスッキリとした良い空間で、考えていたエクササイズやストレッチをするにも良い感じに思えた。そして偶然にもその会場のオーナーさんはその日は遅くまで事務仕事をするつもりだったとかで(またはそう言って)快く会場を貸してくださった。こうしてわずか1時間ほどの間に会場は変更され、新しい会場のセットアップもテキパキと済まし、冷房も入り、夕食をすました参加者がやってきて「身体を考える時間」が気持ちよく訪れた。
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画像:「身体を考える時間」より。簡単なエクササイズや呼吸法、ストレッチをする様子。
この件は、そもそもの見通しが甘かったのではという話かもしれないし、SiPらしいというより私らしいだけかもしれないし、わりと月並みなトラブル解決裏話かもしれない。ただ残り時間ギリギリで、私単体の諦めの悪さだけでは動き出さなかった何かが、スタッフとの会話からはじまったシンプルなパス交換だけで生まれたSiP的瞬間だったように思えて嬉しかった。
もちろんスケジュール通り行くのならそれで良いのだが、何か気になることがあれば粘り強く結論がでないままに閃いたことややってみたいと感じたことの可能性をさぐり、まさにそれをリアルタイムで実験してみることがSiPらしい時間を作り出すと思う。周りに気を使いすぎても走り出せないし、走り始めるのにそれなりに確信みたいなものが要るような気がして迷うかもしれない。そんな時に後押しするのは、何が正解なのかというポジショニング思考ではなく、あくまでも貪欲な興味から生まれる動きである。興味の反射神経みたいな何か。仮にそういう動きが生まれる瞬間をSiP的瞬間と呼ぶとして、そういう瞬間に気持ちの良い動きが出来たらきっと身体が覚えてくれる。なんなら別の局面でも自分自身驚くような動きをするかもしれない。逆に最良のタイミングやアイデアを見過ごしてしまったり、せっかく来たパスをスルーしてしまって未だに気づいていないこともあるだろう。それでも私が強く思っているのはスクールに参加した人達がこの合宿めいた時間の中でそういう瞬間を楽しんでほしい、そういうSiP的瞬間を後押し出来るプログラムをまた組めたら良いな、ということに尽きる。