こんにちは、田中です。今日は時々雨が降ってはきましたが、久々に日差しが強くシャツも汗ばむ一日でした。5blog1ホスピテイルの入り口に咲いている紫陽花も淡い綺麗な色に染まっています。

さて、先日19日にピル&ガリア・コレクティヴの展覧会「(不)可視のプロパガンダ」がオープンしました!

今回は、そのオープニングイベントとして同日18:30に行われましたライヴ・パフォーマンス「亡霊パヴィリオンのみやげ」のレポートをお伝えします。

このイベントはピルとガリアの3週間にわたる日本での滞在制作により完成した作品を、旧横田医院の内部空間を背景に篠田栞さんのパフォーマンスとともにライヴ上演するというものでした。日本の能楽の構造や1950年のアート集団「実験工房」の舞台作品からインスピレーションを受けた本作は、日本のモダニズムにおけるある瞬間を亡霊の記憶として蘇らせます。

ライヴ・パフォーマンスは、ピルとガリアが大阪の万博記念公園で撮影した映像にナレーションをつけた映像作品と、彼らが制作した舞台装置、篠田さんのパフォーマンスによって構成されています。脚本は全てピル&ガリア・コレクティヴが執筆しました。能の台詞は日本語に訳されたテキストを元に、パフォーマーの篠田さんが能の歌唱法に合うように再構成されました。5blog6パフォーマンス中に流れる映像の中には3人の亡霊が登場し、それぞれ「Harmony」「Progress」「Mankind」と文字が縫い付けられた衣を纏っていますが、実はこの3つの単語は大阪万博のテーマであった「人類の進歩と調和」(Progress and Harmony for Mankind) に由来しています。未来をイメージしたパヴィリオンの数々が立ち並んでいた当時の風景が、今では日本庭園など伝統的でかつ作り込まれた風景に取って代わっている万博記念公園のさまざまな場所に、3人の亡霊が現れます。その映像に合わせ、落ち着いた男性のナレーションで当時の万博の様子や現代の消費の変化の有様が淡々と伝えられています。

ナレーションの中で一番私がハッとさせられたのは「○○フリーという商品が増えていることは、欲望を抑圧することでしか喜びが生まれない現代社会を示している」という箇所です。確かに、近年糖質フリーやグルテンフリーなど、それまで当たり前とされていた製品の材料の一部を削ることで健康促進や体質改善が期待できるから、とさまざまな種類の○○フリー商品が流通しています。ですが、欲望を制限することに消費者側が喜びを感じ、企業側もそういった商品を積極的に提供しているのは何とも皮肉であると感じます。そして万博が開催されていた1970年には想像もしていなかった方向に社会全体が動いていることを再認識させられました。5blog7

 

また能については、パフォーマーの篠田さんによると、先に述べた方法で日本語に訳された台本を演劇におこすという作業のなかでいくつかのプロセスを踏んだそうです。まずは、ピルとガリアから送られてきた台本のテクストの世界観やリズム、温度、抑揚などの発音の身体性を理解するために、英語のままテクストを暗唱。そこに万博当時の音声資料や彼らの過去の作品、実験工房の資料、今回のステイトメントを重ね合わせながらイメージを膨らませる。続いてそれらのイメージや英語のテクストの感覚を保ったままで、能の戯曲に再構成する作業。そして最後に作家であるピル&ガリア・コレクティヴと音、動き、効果も含めたすり合わせを行う。このような過程を経てパフォーマンスをつくり上げていったそうです。

実際に再構成の作業をしていた時のメモを見せていただきましたが、一つ一つの台詞や場面ごとにイメージや抑揚、亡霊の様子、背景となる資料などが詳細に書かれており、さまざまな要素を重ね合わせて演劇におこしていたことがわかります。

能のパフォーマンスは3つのシーンに分かれており、2つめの場面では実際にパヴィリオンで働いていた若い従業員の女性が亡霊となって現れるのですが、そこの最後の台詞で「自動販売機を別の場所へ移動させたんやろうか?」と関西弁が出てきたとき、確かに当時そこに絶対に存在していた人物である、そのリアルさを感じ妙な気持ちになりました。

30分以上に渡るライヴ・パフォーマンスは、40名を超えるたくさんのお客様からの熱い拍手に包まれ幕を閉じました。また、その後に行われたアフタートークも大盛況でした。そちらについては次のブログをご覧ください。

現在展覧会では、19日に実施したパフォーマンスの動画と舞台で上映された映像を合わせて再編集したものをインスタレーションの一部として上映しています。より作品を理解していただけるよう今後は亡霊の台詞をプリントアウトしたものもおわたししようと思っておりますのでぜひ参考にしていただければと思っております。

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【ピル&ガリア・コレクティヴ《(不)可視のプロパガンダ】2019/07/19~08/06 13:00~18:00 (休館日:水・木)(入場無料)

*展覧会では日本での滞在制作による新作のほか、彼らの過去の映像作品6点が展示されています。1作品の鑑賞に20~30分ほどかかりますのでお時間に余裕を持ってお越しください。

(田中 咲衣)