山下さんのレジデンスプログラム、第四回目のパブリックプログラムでは、俳優であり、詩人の渋谷橙さんをお招きして公開トークを行いました。

トークは、山下さんがマレーシアでのリサーチについて、台本にまとめたものの映像を見ながら発表する所から始まりました。前回は選挙が始まるまでの出来事を纏めた台本でしたが、今回は「マレーシアのリサーチから鳥取でのレジデンス、横浜・東京での発表の流れ」「マレーシアで山下さんがやった事」「ファミー氏が友人であるから、誘いを受けマレーシアに行った事」「ファミー氏の演説がどんどん人気が出てきた事」「警察の対応の変化」などが台本に盛り込まれていました。渋谷さんはマレーシアの選挙の様子を見て、(選挙が)盛り上がっていて羨ましいし、そういうものを目指してこれまで一人で活動していた、と感想を述べていました。

山下さんの発表ののち、渋谷さんのこれまでの活動についてお話を伺いました。渋谷さんはワタリウム美術館で2011年に開催されたChim↑Pomキュレーションの展覧会の「ひっくりかえる」展を見たことで「アートから政治にアプローチできる」と気付いたそうです。また、元々は東京に住んでいたけれど、東京より生活しやすい場所を求め鳥取に辿りつき、星粒憩食店を始めたと仰っていました。自分の活動の場所(星粒憩食店)を持った事で、その場所を中心に選挙を日常会話にできる様にと「鳥取選挙お姉さん」や「安保法制考えようデモ」の活動を行ったそうです。
渋谷さんは、想像力の欠如に対する危機感から、それに警鐘を鳴らすために単純で分かりやすい表現をしない事を意識しているそうです。また、議論を行うことでより良いものができる、と考えているがその議論がなかなか始まらない、と述べていました。

実際、渋谷さんは上記の「選挙お姉さん」や「考えようデモ」を行うことによって、周囲からのプレッシャーを感じたり、レッテルを貼られたりしたことから、次に行うパフォーマンスはもっと違うかたちで展開させたいと考えている、とお話しされました。

その後の質疑応答で、渋谷さんは政治に対して「待つ」というアプローチをおこなったのに対し、山下さんは「直接行ってみる」というアプローチをしたという違いについての指摘がありました。山下さんの「それ(直接行く事)しか思いつかなかった。」というコメントにロックを感じました。また、「演劇や舞台は、どこまで生にこだわれるか」という言葉に山下さんの活動の根源となるものが見えた様に思いました。(門脇瑞葉)