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HOSPITALE2018レジデンス・プログラムとして、振付家の山下残さんによる滞在制作が8月10日よりスタートしました。
今回のプログラムは、2018年5月にマレーシアで行われた国政選挙をテーマに舞台作品「GE14」を制作するというものです。この選挙は野党連合が歴史的勝利を収めたと言われており、山下さんはその時当選した野党メンバーの一人であり、友人の演出家でもあるファミー・ファジール氏の選挙運動に同行し、その様子を映像・写真・日記に記録しました。山下さんによると、マレーシアでは5年に1回ペースで選挙が行われ、それはまるでフェスティバルのように賑やかだそうです。選挙では、政党の旗やTシャツなどの様々なグッズがあったり、選挙期間の夜中に行われるチェマラという選挙演説では、候補者へのコールが起こり、ロックフェスのような盛り上がりを見せるそうです。その様子を撮影した動画はインターネットに投稿され、多くの人にシェアされるとのことでした。
今回のトークには鳥取大学のマレーシア人留学生4人が参加し、山下さんの質問からそれぞれの意見を話していただきました。また、他のオーディエンスの方々と日本とマレーシアの様々な違いなどさまざまな意見が交わされ、世界が少しずつ膨らんでいくように感じました。
日本では選挙期間であっても、どこか政治の話がしづらいように思います。日本と同じように、政治的な話をするのは多民族が共存するマレーシアにおいてもタブー視される部分があるそうです。しかし、マレーシアの留学生たちの話を聞いていると、日本では政治というものそのものに対して嫌悪感を示す雰囲気があるのに対し、マレーシアでは政治そのものは自分たちの生活において重要なものだと認識されているように感じました。
さらに、マレーシアは日本と違い投票率が80%を超えるくらい、多くの国民が国の方向性に強い関心を寄せているそうです。これは、マレーシアが比較的若い国であるという事だけでなく、マレーシアの選挙活動が人々にとって親しみやすく、大切なお祭りであると考えられているからなのではないだろうかと感じました。実際、今回のトークに来ていたマレーシアの留学生は未成年の方ばかりでしたが、彼らは皆選挙や政治の情報を持ち、それぞれの考えを持って話していました。
今回の意見交換を通じて、私は現代の社会では選ぶことができるし、選ぶことができるからこそ、自分や他人、国家や世界にとって本当の豊かさとはなんなのかと考える必要があると感じました。(門脇瑞葉